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個人特訓教室 メールマガジン
「 Person to Person 」
No.005 2001.10.10 ためになる教育マガジン
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magazine@tokkun.net http://tokkun.net
祝! 読者500人突破!
目次
●あいさつ
●教育の今・・・・・・・・・「教育路線のダッチロール」吉岡敏男
●学校紹介・・・・・・・・・早稲田大学政治経済学部 黒田麻惟子
●かたえくぼ 〜ショートユーモア〜
●今月のおすすめ・・・・・・映画「コンタクト」 鮓谷喜也
●今月のプレゼント
●From a Person(読者の声)
●特別寄稿・・・・・・・・・個人特訓教室代表 光岡誠司
●編集後記
★★★★★☆☆☆☆☆★★★★★☆☆☆☆☆★★★★★☆☆☆☆☆★★★★★
◆あいさつ◆
涼しげな空気が街を包み、秋もかなり深まってまいりました。巷では、例の
テロ事件騒動でてんやわんや、世界を巻き込んだ大騒ぎになってしまいました。
アメリカに親類、知人のいる方はやきもきしたことでしょう。まだまだ暗いニ
ュースが続きそうですけど、我々は、元気よく楽しくためになる情報を今月も
提供してゆきます。そのため、ちょっとしたお笑いのコーナーも設けたので、
寒がらずに笑ってください。反応の結果如何では存続も危ぶまれるので、ご協
力お願いします。
また今月から、図書カードのプレゼントコーナーを発足させました。どしど
し応募してください。
編集責任者 吉岡
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◆教育の今◆
この項目は教育について思うところを書き綴ったコラムです。今月は編集人、
吉岡が感じるままに述べてみました。
「教育路線のダッチロール現象 〜センター試験5教科7科目へ〜」
吉岡敏男
今、日本の教育路線は明らかに蛇行〜ダッチロール〜しています。しかもそ
の行く先は悲しいことに真っ暗です。
各マスコミで報道されているように、2004年の春から、国立大の大半で
ある75校がセンター試験において5教科7科目を課す予定である事が分かっ
ています。5教科7科目以下で受験できるのは、芸術系、体育系の限られた学
校になってしまいます。
今春のセンター試験では私立大を含めた全受験生のうち、24%が3科目以
下での受験であり、国立大でも90大学169学部とかなりの数に上っていま
した。単純に考えると、2004年以降、国立大学を受験するためにはこれま
でよりも多くの教科、科目を学習しなければならないということになるのです。
いったい日本の教育機関は何を考えているのでしょうか。先ほどの教育制度
の改革で小中の学習内容の3割が削減されてしまいます。現在の学習量より確
実に減っていくのです。だが高校では上述のことから、センター試験対策のた
め勉強量を増やさなければなりません。その理由は国立大学協会によると「新
入生の学力低下を防ぐため」であり、大学審議会の答申では「複数の教科・科
目に基づく知識等を組み合わせ、応用してゆく能力等の判定を目的とする」と
謳っていますが、その基礎を養う小学中学ではこれまで以上に浅い学習しかし
なくなるのです。にもかかわらず、高校になると、現状よりも更に多量で多岐
にわたる学習をしなければならないのです。
教育行政に携わる人々は、全くもって、相反する行動を取っていると言わざ
るを得ません。その場しのぎの対応がこのような結果を生んでしまったのです。
長期的なビジョンは無いのかと、その愚かな考えにあきれてしまいます。教育
改革によって学習時間を削減することで生まれる「ゆとり」の時間ですが、結果
として起きてしまう知識の欠如のしわ寄せは、すべて高校生にやってくるので
す。これでは教育改革など全く無意味だとしか言い様がありません。そして、
このような意味不明の政策に翻弄され、戸惑うのは、当事者であるこれからの
子供達なのです。
5教科7科目試験による学力低下の防止と、学習内容の3割削減。一つの飛
行機に乗る二人のパイロットが、まさしく真反対にハンドルを切りダッチロー
ル現象を起こしている、文部科学省を始めとする教育機関に対し、我々はもっ
と声を大にして、異を唱え、意見をぶつけなければならないのではないのでし
ょうか。
t.yoshioka@tokkun.net
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◆学校紹介◆
このコーナーでは進路で悩む学生のために、実際にその学校に通っている生
徒に、どのような学校なのかを赤裸々に語ってもらいました。ぜひ今後の参考
にしてください。またすでに学生でない人も、自分の学生時代を思い起こしつ
つ、少し甘酸っぱい気持ち(?)になって読んでもらえたら、と思います。
今月は、当塾のOBである、黒田麻惟子さんにお話を伺いました。
(インタビュー:吉岡)
○ それでは早速、インタビューに入りたいと思います。黒田さん、よろしく。
黒「こちらこそよろしくお願いします」
○ それでは大学名をお願いします。
黒「早稲田大学政治経済学部政治学科に所属しています」
○ 早稲田! なんと我が後輩ですね。
黒「よろしくお願いします、先輩!」
○ よし、任せとけ! ところで、僕らがいた頃は結構生徒数が多くて、授業なん
か大会議みたいなのが多かったけれども、今はどうなの?
黒「今もそういうのありますよ。200人くらいの大教室でやったり。でもいる
のは100人くらいだけど(笑)。ただ語学とかは50人くらいで、ゼミだとホ
ント10人前後ですよ」
○ 語学、何とってるの?
黒「中国語です」
○ 渋い。政経らしい。
黒「なんですかそれ(笑)」
○ 僕は違う学部なんで、政経の事よく知らなくてね。なんか、政治家の登竜門的
な気配があるじゃない?どんなことしてるの、授業なんか。
黒「法学だと、脳死問題を取り上げたり、政治学だと政治とは何かというのを勉
強するんです。英語の文献を読み込んだり・・・」
○ すごいねぇー。で、(急に真面目に)政治って何なの?
黒 「そうですねぇー、難しいんですけど、政治家たるもの、その目標は支配階
級たることではなく人類のために自分の力を使うことじゃないですかね。そ
れをテーマに勉強にまい進しています」
○ クゥーッ! 良い事言う! 今の政治家に聞かせてやりたい。
黒「ハハハハッ」
○ 授業は面白い?
黒 「面白いですよ。文献の授業の先生は話が面白いので、すごく人気があります
し」
○ でもうちの大学だから、変わった教授も‥
黒「いますねーー。辞めちゃったんですけど、全身すべて緑の服装で決めてい
たりとか」
○ やるねぇー(笑) 擬態しないカメレオン。
黒 「あと、他の学部では、60分授業をしたあとはひたすら音楽を流すといっ
た先生もいたり」
○ 僕らの時もいたよ、変なの。生徒の成績を決めるのに、テストの答案を扇風
機で吹かせて一番遠くに飛んだ人をトップにするとかね。
黒「うそみたい!」
○ ホント、ホント。で、入学してみて、肝心の学生たちも変わった人が多いと
思ったでしょ?
黒「予想したよりはまともでしたよ。雰囲気も普通だし。商学部は、ギャル男
が多いみたいです。それと文学部には変な人が多いと聞いてます」
○ 文学部はね(二人意味ありげな笑い)。ところで、昔と比べて今の学校の設
備、よくなったって聞いたんだけど。
黒「パソコン関係はかなり充実してますね。24時間開いている施設もあって、
端末は使い放題ですよ。また図書館がすごく立派です。あれはびっくり。今
もめている、新学生会館もできましたけど」
○ 学食は?進化した?
黒「それは昔と変わらないんじゃないですかね。味もまあまあですし。周りに
安くておいしいお店がたくさんありますから、さほど重要視してないですけ
ど。でも文学部の学食の方が女性が多いせいかちょっとおしゃれかな。値段
も高いみたいです。理工キャンパスは男率が高くて、おたくっぽいと聞いて
います(笑)」
○ その通り(笑)。怪しげな連中ばっかり。むさくるしい男の花園、おたくの
楽園と言われる。自虐的だなぁ今日は(注:インタビュアーは理工学部出身)。
じゃズバリ聞くけど、早稲田の良いところって何?
黒「とにかく自由。その分全て自分で責任を取らなければならないけど。それ
と人がやたら多いので、色々な人と知り合う事が出来ます。それだけ可能性
が落ちているので、頑張れば4年間いろんな事が出来ると思いますよ。サー
クルも有名なのから無名なのまで、1000位あるんじゃないですかね。ま
た、奨学金や、留学のサポートがしっかりしてますよね」
○ 自由ってのはあるよね、確かに。じゃ、これは良くないってことは?
黒「良い事と重なるんですけど、自分から動かないと、学校と自宅を往復する
だけの生活になります。自由の意味を履き違えて堕落してしまう人もいるの
で、しっかりとしたビジョンが必要かな。それと、左、右、宗教系の勧誘が
多いのは困ります。最後に声を大にして言いたいのが、学園祭がなくなって
いるのがホントに辛い。(授業料の値上げその他で生徒と学校側でもめて、学
園祭を中止したいきさつがある)」
○ ここからは後輩に対して。どんな勉強が効果的だった?
黒「基本を重視することです。知識を確実に身につけ、苦手な科目を作らない
事が大切ですね。塾で何度も指導されたのですが、英単語や英文法はひたす
ら繰り返し覚えるのみです。これは古文の文法にも言えることですが。これ
で応用問題がはじめて解けるようになるのです。他に、社会なんかの暗記科
目は、なるべく早めに知識を身につけないといけないと思います」
○ 最後に後輩に一言。
黒「苦手なものは基本に返って学習し、苦手意識を無くす事。文系科目は早め
に暗記すること。今日やるべきことは今すぐやること。復習を繰り返す。こ
れらを守れば、希望の大学に必ず合格できると思います。皆さんが志望校に
合格できることを願っています。大学生活は本当に楽しいです。塾や家で必
死に勉強して辛かったことも今ではいい思い出ですから、皆さんも頑張って
ください」
○ 本日は本当にありがとうございました。
t.yoshioka@tokkun.net
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◆かたえくぼ 〜ショートユーモア〜◆
今月から始まりました、ちょっとしたジョークのコーナーです。箸休めのつも
りで気楽に読んでください。
○突然の質問でわれわれ講師も戸惑うことがある。
東村(仮名)「先生。チューリップの球根をさかさまに植えるとどうなるか知っ
てる?」
先生「芽は出るよ。下から上へ・・・」
東村「プーリッチュが咲くんだよ!!」
先生「・・・次の問題いこう」
何事もなかったかのように授業は進んでいった。
y.sushitani@tokkun.net
○「単語は貼って覚えよう!」
中学一年になったばかりの近藤君(仮名)は英単語がどうしても覚えられな
い。一週間くらい苦労してなんとかoneは覚えたがtwoがいけない。ローマ字
に無いからだ。書くとどうしてもtoになったりtowになったり、touになった
りしてしまう。
ここで先生が思いついたのがオリンピック方式。
「ニッポン、チャッ、チャッ、チャッ」とやるようにアメリカ選手は「ユー、
エス、エイ(U.S.A.)。ユー、エス、エイ」とやる。これを応用した。近藤君
はこぶしを突き上げながらひたすらtwo「ティー、ダブル、オー。ティー、ダ
ブル、オー」と叫び続けた。
これが効果満点、オリンピック方式に変えてなんと一日でtwoの綴りを覚え
たのだ。
さぁ、これからと言う矢先、近藤君も先生も呆然とその場にたち尽くした。
threeである。これでは得意のオリンピック方式が使えない。「ティーエイチ
アールイーイー、ティーエイチアールイーイー」は長いし語呂も悪い。
絶望的。ひたすら書きまくるしかない、が、やはりうまくいかない。
「だめだぁ」落ち込む近藤君に先生はA3の大きな紙に“Desk”と大書して渡
した。そしてこう言った。
「書いて覚えられなくても見て覚える人がいる。とにかくこの大きな紙を机
に貼っておけ。毎日見ていればなんとなく頭に入るはずだ。お父さん、お母さ
ん、お姉さんにも協力してもらえ。大きな紙をたくさんあげるから、少し邪魔
かもしれないけど、doorとかclock、table、chairと書いて居間にも貼らせて
もらいなさい。最初だけだ。少し慣れればこんなことをしなくても覚えられる
から。そうしたらまたthreeから頑張ろう。」
やけくそである。
半信半疑だった先生も、数日後の近藤君の単語テスト(たった5問だが)の
結果には感動した。
「おう、すごいじゃないか!近藤!」家中に貼った単語はほとんど書けている。
近藤君も
「先生、でっかい紙に書いて貼っておいたほうがいいよ!」となった。そして、
なんと大胆にも、友達に
「書いて貼っておいたほうが覚えやすいよ」と薦めていた。
ところが話はこれで終わらない。
次の単元の単語はfather、mother、sisterだったのである。
s.mitsuoka@tokkun.net
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◆今月のおすすめ◆
このコーナーでは教育問題に限らず、親子関係や思春期の問題その他、広い
意味において、人生の中で出会いたい本、映画、TV番組などをピックアップ
しておすすめしてゆきます。
今月は中川校の鮓谷先生のおすすめです。
科学する眼と探求する心 〜映画「コンタクト」より〜
鮓谷喜也
コンピューター、インターネットをはじめとしてIT関係の技術の発達は毎
日のようにマスコミによって伝えられている。しかし、生徒たちの様子を見て
いると誰一人それらの仕組みに興味を抱くことなく、準備された物をただ使う
ことがあたりまえのように感じているようだ。
その昔子供たちにとって憧れの世界であった宇宙やロボットも徐々にその輝
きを失いつつあるように思えるのは私だけだろうか?ロボットはAIBOや
ASIMOなどの登場により私たちの実生活に近づきつつあるため神秘性こそ薄
れてはいるもののその進化を感じる事が出来るが、宇宙に関しては、日本人宇
宙飛行士にしても、ロケット打ち上げにしても話題に上ることは少なくなって
いる。
そんな中是非見てもらいたい映画がある。「コンタクト」(主演ジョディ・フ
ォスター)である。変人扱いされながらも宇宙からの信号を捜し求めていた主
役がついに信号をキャッチする。政治・宗教の問題も合わせてストーリーが展
開していく映画であり、単なるSFではなくはるかな宇宙に思いをはせる科学
者の夢が盛り込まれている。太陽系から近いとされている恒星“こと座のベガ”
でさえ26光年(光の速さで26年かかる距離)の彼方にあり、まだ人類が信
号を発して約半世紀しか経っていないのであるから、その信号は宇宙では所詮
歩き出した子供の一歩よりもわずかな距離までしか届いていないのである。返
事が来たとしてもそれは随分先のことになるであろう。地球以外の生物がいる
かいないかの真偽は別として、我々しかこの宇宙に存在しないと仮定すれば、
なんて寂しくてもったいないことだろう。これからの秋の夜長、夜空の奥行き
について考えてみるのも一興である。
この映画の主人公のように「科学する眼と探求する心」を生徒たちにも持っ
てもらいたいと切に思う。時間だけ余裕ができた“ゆとりの教育”や、内容が
大幅に削減される教科書改訂が生徒たちのそれらを磨きあげてくれればいいの
だが、どうやら我々塾講師もその役を担うことになりそうである。
y.sushitani@tokkun.net
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◆今月のプレゼント◆
今月よりプレゼントコーナーを設けます。抽選で図書カード千円分を5名様
へお送りします。以下のページへ進んで、メールアドレスと、キーワードを入
力してくだされば応募して頂いたことになります。簡単ですので、皆様奮って
ご応募ください。
今月のキーワードは
ワセダダイガク
です。では、下のページへどうぞ!
http://tokkun.net/present/present.htm
締め切りは十月末日入力分まで。 尚、当選者にはメールでお伝えします。
また、当塾のホームページにおいてメンバー専用のページがありますが、メ
ールマガジン購読者は、そのままメンバーとなりますので、会員専用ページに
入る際入力するパスワードをお教えします。パスワードは、
goukaku
です。お気軽に立ち寄ってください。
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◆From a Person(読者の声)◆
読者の方々から、メールマガジン9月号に対するご意見が多数寄せられまし
た。その一部をご紹介したいと思います。
メルマガ9月号、伊藤氏の書いたコラム読みました。まったくその通りであ
ると思い、非常に感銘しました。本当にこのままでは、知識も常識も無いあほ
馬鹿若者ばかりになりそうで、今の流れは間違っていると痛烈に思います。
PS.それにしても9月号に書かれていた灘高はすごい。でも、結構、勉強勉
強ばかりで、普通の学生みたいに部活や恋愛やその他息抜きをしていないので
はないかと思い、振り返ったときに、本当に楽しい学生生活であったと思える
のか疑問に感じました。
magazine@tokkun.net
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◆特別寄稿◆
今月は講師の学生時代をお休みし、当塾代表の光岡誠司先生による特別寄稿
をお届けします。
先月、中川教室に通っていた一人の高校生が病気で他界しました。
彼はもともと脳の血管の一部に異常があり、すでに二度の手術を経験し、それ
ゆえ、後遺症により左手がやや不自由でした。それでも彼は何ら臆することな
く、ユーモアもあり、学業にそして学校の行事にも前向きに取り組む生徒でし
た。特に勉強に傾ける努力はすさまじく、その熱意、勤勉さは我々指導する側
の心を揺さぶるに充分であり、当然我々も全力でそれに応えました。
彼の夢は医者になることで、志望は東京大学、京都大学など国公立の医学部、
このまま夏を越えてくれれば充分合格を狙えるレベルに到達しかかった今年の
7月はじめ、病が彼を襲ったのです。あにはからんや、受験勉強どころか、彼
は集中治療室で何日間も“死”を相手に戦わなくてはならないという運命にな
ってしまったのです。
しかし、その時の彼は強かった。その生死をめぐる戦いに打ち勝ち、退院ま
であと少しという8月末に、外泊許可をもらい、お父さんと一緒に塾を訪ねて
くれたのです。
耳を疑いました。無事快方に向かっているというあいさつに来てくれたのだ
と思っていたのですが、「今度の外泊許可が下りる週末に英語の授業を受けた
い、1時間でもいい」と言うのです。
ここから失地を回復したいという彼の気持ちは痛いほどわかりますし、私も
あらゆる協力を惜しまない覚悟でしたが、なにぶん彼は入院中の身で、外見か
らも痛々しさが見て取れるし、私との会話もまだ完全には成り立たないほどだ
ったのです。
その日彼が久しぶりに教室に入るときも、手術痕を隠している彼の帽子を取
ろうとするお父さんの手を、私の目の前でさっと振り払っていたのです。私は
すぐに彼の意を察し、「あっ、(帽子を取らなくても)いいですよ」といって
招き入れてから、あいさつをしたのでした。
外泊許可の出たたった一泊2日の時間を使ってでも、それがわずか2時間で
もここで授業を受けたがっている。彼の医学部進学に向けた情熱は私の想像を
はるかに越えて激しいものだということを思い知らされ、私は授業を応諾し国
立大学受験用のテキストを渡しました。
授業に滞りは全くなく、「大変だったね」「これからできそうだ」などと再
出発を喜び合っていた、そのちょっとした間合いがあった時、彼は「やっぱり
・・・」そう、ぽつっと言うと、突然、手術跡を覆っていた自分の帽子をすっ
と取ってしまったのです。
“さあ、これから”という意気込みがあったでしょう。自分だけマナー違反
だと思ったのかもしれません。私は私の目の前にさらされた彼の痛々しい傷跡
を見ながら、その壮絶なまでの潔さ、勇気に心底からの感動をおさえることが
できませんでした。
その日、彼は新しいテキストを手に、再入院のため病院へ直行しましたが、
結局、それが彼との永遠の別れとなりました。信じがたいことに再び、打ち負
かしたはずの病が彼に襲いかかり、脳内で出血してしまったのだそうです。
訃報が届いたのはそれから数日後のことでした。私は“本当は治ってなんか
いないじゃないか”という無念の思い、そして、ベッドの上で目をつむったま
ま横たわっている彼の姿を思い描いてしまい、しばらく言葉が見つかりません
でした。本人、ご両親にとってもあまりにも残酷な予期せぬ最期になってしま
ったのです。
他人のことを思いやり、どんな努力も惜しまない若者は我々社会の何物にも
代え難い財産です。その彼がこの世を去ってしまったのは私には何とも悔しい。
ましてご両親の心痛はいかばかりか、察するに余りあります。
そして今、こうしてここに彼のことを書いて何の意味があるのか。志半ばで
病に倒れた前途有望な若者の死の後に、残された我々ができることはないのか。
死という現実の前ではどんな言葉もどこかむなしい。だから、生きていると
いうことはありふれていても、実はかけがえのないことだということをしっか
と心にとどめ前進すること、我々が死者に対し何か報いることができるとすれ
ば、それだけではないか。
我々も大切な日本の資源である若者の教育の一部を担っている、彼の死を境
にその認識を新たにし、微力であっても社会に貢献したい。
生徒諸君には、死と直面しながらも固い意思を持って自分の人生の夢に向か
って全身全霊打ち込んでいる生徒が、自分のすぐ近くにいたことを覚えておい
て欲しい。そして“彼のように・・・”というのではなく、“自分らしさ”と
は何か、そのことをもう一度考えてそれぞれの目標に邁進してくれたなら、彼
の死は計り知れないほどの意味を持つことになるのではないか。そう思います。
どうか安らかに眠ってください。バトンはみんなで引き継ぎます。
s.mitsuoka@tokkun.net
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◆編集後記◆
今月号より、紙面の構成を少し変えてみました。日々努力して、少しでも良
い物をお届けしようと頑張って参ります。つきましては、一言でも構いません
からmagazine@tokkun.netもしくは個人宛のアドレスに感想を頂ければと思い
ます。皆さんあってのマガジンですから。
そして来月から、また新たな企画が立ち上がる予定です。それは・・・フフ
フッ、秘密ということで、次号をお楽しみに。
magazine@tokkun.net
吉岡